2014年1月8日

テンプルピークでの羊の群れの移動のお手伝いもしくは野次馬見物 その2

今回は前回に続きテンプルピークでの羊の群れの移動のお手伝いの話第2弾。

注意。長いし多分重いです。読み始める前に、何か他にやる事あるのならそちらを先ず優先させた方がよろしいかと。料理しながら読むのはお勧め出来ません。きっと何か焦がしてしまいます。

こちらが第一弾へのリンク

夕方にここの牧場に到着。ベンが準備しつつ、後で面倒なんでここで夕食作って食べてから出発。目的地の小屋は標高1000mくらいの所にあるんで、大体高度700m位歩いて登ってく。前回も2週間くらい前にこの牧場内の最高地点、それこそ『テンプルピーク』にベンと登る時にも泊まった時に行った事あるんですが、大体一時間半くらい。四駆のトラックが走れる道を辿って登って行きます。

そして雨が降り始めそうな天気の中、雨の前に小屋に到着。早速火を熾しお湯沸かし、寝袋広げ、乾いた服に着替えて後は寝るだけの状態。ここの所寒く、周りの山々のてっぺん、2000mより上にはうっすらと新雪が。真夏のはずなんですけどね。寒い夜になりそうです。






この小屋は、建てられてから100年位経ってるそうです。グレノーキーのこの辺り一帯の山の上の方では、20世紀の初頭にシーライトという鉱石、鋼鉄を作る際に鉄を強くするタングステンの原料、が採掘されていました。その時期に多くの小屋が建てられ、現在でもこの辺りの山の至る所にその頃の小屋が建っていたり、今では崩れていますがその残骸等を見る事が出来ます。恐らくこの赤い小屋も元々はそういう起源ではないでしょうか。今ではたまにハンターの人がこの家族に連絡して断り入れてから利用したりしてる様です。


夜10時前には寝袋にくるまり、ロウソクの火も消し、眠りにつきました。

そして翌朝。

5時半起床。昨日、マークに『大雨降ったり、川の水嵩が多かったりで、6時半から7時の間に現れなかったら今日は無し』と言われていたので、この時間での起床となりました。幸い空は青空が少し顔をのぞかせていて、雨は風は強そうですがとりあえずは降らなさそう。


お湯沸かして、簡単にインスタントコーヒーと朝食を摂り、荷物をまとめ、歯磨いて待つ事ちょっとで、やがて犬達の喚く声と4輪バギーの音が下から聞こえて来て、6時半過ぎには出発。お父さんのマーク、アマンダとハリー、そしてベンと私、プラス犬7匹で出発。




一時間程山を上に登って行くとやがて羊の群れを発見。犬達が命令に従って吠え始めると羊の群れがその吠え声に対する恐れから動き始めます。狙いとしては、後ろから追いかける様にして羊の群れを誘導して動かし、山の斜面を下って行って左下にある川を渡り、向かいの奥にある山々に群れを二つに別けて、連れて行って放すというかほっとく。

で、3月終わりから4月の始めにもう一回今度はそっちの奥の方の山にいる羊達を、犬連れて3日くらいかけて追っかけて見つけ出して集めて毛を刈ってその毛を売ったり、幾つかの羊達は肉用に屠殺されてその肉を売りに出すそうです。

メリノの羊は自然と高山地帯を好み、比較的標高の高い涼しい場所を好みますので、探しに行くのが大変。マークによると、その昔、狼とかから身を守る為にそういう習性を身につけたんじゃないかという事です。もちろんニュージーランドに狼はいませんし、メリノの羊はヨーロッパから持ち込まれた外来の動物です、念の為。

高度1400m位から一気にタソックという草の生い茂る急斜面を一気に下り、オックスバーンと言う川の大体標高500mくらいの地点まで行き、そこでオックスバーンを渡ります。

羊はやっぱり水が恐いらしく、犬達に吠えられけしかけられてもなかなか自分たちから進んで渡ろうとはしません。業を煮やしたマークが何回か羊抱き上げて川の中に投げ込んでました。そしたら徐々に『ん、なんだ?あいつ川のあっちっかわいるぞ、渡るの大丈夫なんじゃね?』みたいな感じで次々と他の羊達が後に続き、暫くしたら徒渉完了。


次は我々人間と犬の番。雨続きのため比較的川の水量が多く太腿くらいの水位、流れが結構急です。なるべく浅そうな箇所を見極めいざ。私はビデオカメラを右手に持ってたんですが、川の真ん中で一度急な流れに足を取られバランス崩し危うく転びそうになりましたが、なんとか持ち堪えてセーフ。

周りの皆はそれ見て大笑いしてましたけど、平然を装い話題を変え、5分位歩いた所にある別の小屋まで行きそこで休憩。薪で火熾してお湯沸かして紅茶飲みながら、サンドイッチ食べつつ、日が射して来てたので太陽の光を楽しみ暖まりました。これで10時半過ぎ。二つ目の小屋も建てられてから100年くらいとの事で、小屋の中の柱には、今までかつてここに寝泊まりした人達がナイフで自分の名前と年数を刻んだ跡が幾つもありました。

しばらくのんびりと休憩した後、再開。今度は羊の群れを二つに別け、二つの別の山にそれぞれ移動させて放すとの事。ハリーとアマンダ、ベンが先ず最初の半分を手前の山に連れて行き、暫くしたら今度はマークと私で残り半分を奥の山の上まで羊を連れて出発。

アマンダは芸術家で、絵画から刺繍等の作品を手がけ、どうやら山の上の方で暫く絵を描くみたい。犬も半々に別け、それぞれのグループにお供します。この頃には犬達も私に慣れて来て、私の足下に来てはふざけようとしたり、撫でてもらおうとしに来たり。

面白かったのは、最初の方、一匹の犬がマークの言う事聞かなかったら、お仕置きとして、前足一本首輪の中に入れられ固定されてしまい、犬は自分からはその足を取り出す事は出来ないので3本足で結構長い間歩き回ってました。

その日結局2匹がそのお仕置きを受けるはめに。でもなんだかんだ、凄い元気でしたよ犬達、もの凄いエネルギー。三本足でも平気で川渡ったり走り回ったりしてたし、もう犬同士常にじゃれ合ってました。

こっちでファームでこういう風にペットとしての飼い犬ではなく仕事用の犬達は食事は大抵一日朝一回のみ。ドッグフードが主で、たまに骨付きの赤みの肉そのまま、食べる時歯で骨砕く音ガリガリ言わせながら食べてます。まあその赤みの肉というのも、牧場の死んだか殺した羊なんでしょうけど。ペットではないんで、頭悪かったり、言う事聞けない犬は大抵殺されてしまいます。役立たないからね。何度も言うけどペットじゃないし。後こういう犬達は皆オス。

二つ目の小さめの川を渡り、いざ登り。斜面を下って来た時よりは進むスピードは大分落ち、羊達もそこら中の草食いまくって歩くのは二の次。でもマークは別に気にするようでもないんでこんなもんなんだなと私ものんびり周りの景色を楽しむ。

やがて1300mくらいの地点まで来たら我々は腰を下ろして羊達が勝手にどんどんゆっくりと高度を上げて行進して行くのを見守りつつ、たわいもない事喋って、たまに犬に吠えさせると羊の行進のスピードが速まり、やがて羊達は視界から消えて行きました。

これで一応一日の主な仕事は完了。後は引き返して家に帰るのみ。今まで登って来た山の斜面を下り、30分くらいで二つ目の小屋までに着き、もう一つのグループと合流。既にまた火が熾してあり、暖かい紅茶をもらい荷物を降ろしてまたまたのんびりと太陽の光を浴びながら軽く昼寝。

といきたい所だったんですが犬達がもうそれはそれは元気で、二つのグループに暫く分かれてたんで再会を喜んでるんでしょうけどそれこそ何年も会ってなかったかのような嬉しさ具合、そこら中かけずり回ってじゃれ合ったり吠え合ったり、しかも何か口にしようとすると『俺にもくれ』って感じで私のすぐ隣に期待に溢れた顔して行儀良くお座りして、しまいには肩に足かけて来たり顔なめようとして来たりで静かに眠る事は出来ませんでした。

この後はまた山の斜面を登り返し、暫く高度を稼いだら後はぐるっと巻く様に斜面をトラバースして行きます。途中急斜面の崖を幾つか横切って行くのにタッソクという草がとても滑りやすく、そこら辺の灌木やら草にしがみついて落っこちない様注意を払いつつ前進。

この頃には私の足もさすがに疲れて来ていたので、怪我をしない様安全第一に行進。やがて数時間後一つ目の小屋に無事到着、そこでマーク、アマンダ、ハリーは4輪バギーに乗って家まで降りて行き、私とベンはそのまま歩いて帰宅。

と、まあ、家に戻って来たのが夕方5時半、ですので計11時間の羊飼い体験の一日でした。何ともニュージーランドらしい体験の出来た一日でした。何年も前からハッセルマンさには一度一緒に行動を共にしたいと言っていたのですが、ようやく念願が叶いました。

ここまで読んで頂けた方がいらっしゃたらそれは感謝です。大分長い文章になってしまいましたが、東京出身の私、こういう世界を見てみたい、生きてみたいという思いでこのニュージーランドに移住して来ましたので、その気持ちがこの文章から伝わったとしたら幸いです。

どうでしょうか、ニュージーランドの、High Country Life。また何かこの様ななかなか日本にいては垣間みる事の出来ない、ニュージーランド人の普段の暮らしの一部を共有出来る機会があったら、私が身を投げ出し経験して皆さんにお伝えしたいと思います。

それでは今回はこの辺で。

0 件のコメント:

コメントを投稿